インプラント再治療
インプラントの再治療と原因についてのまとめ
インプラント治療は成功率が高い手術であると言われていますが、すべての症例において100%手術が成功するとは限りません。不運にもインプラントが再治療となった場合はどのように対処すべきか、万が一の再治療トラブルに見舞われた時に備えて事前に知識を深めておきましょう。
インプラントの再治療費
インプラント治療は、歯科医院が独自の価格を設定できる自由診療なので、再治療になった患者様の負担額も、医院によって異なります。決まった価格ではないからこそ、治療費に対する大きな不安を感じますが、保証制度のある歯科医院であれば無料で再治療を受けられる可能性もあります。
現在、インプラント治療を提供する歯科医院の多くは「インプラント保証制度」を取り入れています。保証の内容は歯科医院によって異なりますが、その多くはインプラント体の手術費(再治療費)はもちろん、上部構造(被せ物)の破損も保証の対象となっています。また、医院のみならずインプラントメーカー独自が設定する保証もあります。
歯科医院によるインプラント保証
歯科医院のインプラント保証は、加入している保証制度や医院独自の取り決めによって保証内容・保証適応条件が異なります。治療前に、しっかりと保障内容・条件を歯科医院にあらかじめ確認する必要があります。例えば、10年間の保証期間があったとしても、条件として設定されている項目を守っていなければ保証期間内でも、全額自己負担となってしまいます。
いずれにしても、保証があるから再治療になってもいいと言うわけではありません。保証はあくまでも安心できる材料のひとつであることを忘れず、毎日のケアに取り組む必要があります。
インプラントメーカーによるインプラント保証
大手のインプラントメーカーでは、独自のインプラント保証を設定していることが多くあります。例えば、アジア人の骨格に合わせて開発されているオステム社のインプラントは3年、長い臨床実績を持つノーベルバイオケア社ならインプラント体は生涯、上部構造(人工歯)は5年、日本人向けに開発された京セラメディカルのインプラントは5年保証となっています。
もちろん、保証を受けるためにはメーカーごとに設定された規約を守っている必要があります。インプラント埋入後に歯科医院で定期的なメンテナンスを受けることを、保証を受けるための条件としていることが多いです。
インプラント再治療の内容
インプラントは、骨の中で噛む力を支える「インプラント体」と天然の歯の役割を果す「上部構造」、そしてその2つをつなぐ「アバットメント」で構成されています。この3つの構造のうち、1つでも問題が発生するとインプラントは機能しません。それぞれの再治療の内容を説明します。
インプラント体の再治療
インプラントが自然脱落した、またはインプラントがグラつき土台として機能していないと判断された場合は、骨造成術を伴うインプラントの再治療が必要になります。インプラント体を抜き取り、骨造成術で骨の回復を待ってから、再びインプラント治療をおこなう大掛かりな手術となります。
アバットメント・上部構造の再治療
上部構造とは人工歯部分のことです。インプラント体に問題がなく、単純に上部構造の破損のみである場合は、上部構造の作り直しや修理で解決できるでしょう。上部構造を外して仮歯に置き換え、その間に上部構造の作り直しや修理をします。
硬い物を咬んだり事故に遭ったりしたことで上部構造が破損するケースもありますが、咬み合わせがズレたことで割れてしまうケースもあります。しかし、歯科医院で咬み合わせの調整も、上部構造の作り直し・修理と併せて行われるので心配はいりません。
アバットメントの再治療
咬み合わせの歪みなどで上部構造に偏った力がかかり続けると、インプラントの土台であるアバットメントが揺さぶられ、インプラント体と上部構造を繋ぐネジの破損や緩みが生じることがあります。この場合も、インプラント体に問題がなければアバットメントの交換やネジ締めだけで済みます。
インプラントの再治療が必要になる原因
細菌の感染や手術機器のエラーにより、インプラントの再治療となることがあります。インプラント手術時に起こりえる再治療の原因について解説します。
原因1 細菌感染
インプラントの術中~術後は、細菌に対する抵抗力が低くなっている時期ですので、この時期にインプラント周辺が細菌に感染すると、インプラントが骨に定着しないだけでなく、周囲に炎症が広がり痛みや腫れを引き起こします。感染経路として考えられるのは大きく分けて2つあります。
- 感染経路:口腔内の細菌
口腔内の細菌です。歯磨きが不十分で口内が不衛生な状態である、または歯周病のコントロールが十分にできていないなどと言った原因により、傷口から細菌が侵入することがあります。
- 感染経路:手術時の衛生環境
手術時に使用した器具の滅菌処理が不十分であったり、手術を行った環境が不衛生であったりすることで、細菌がインプラント体に感染するケースです。
このような経路を経て感染した細菌は、骨組織や歯肉で炎症を起こします。軽度の炎症の場合は、抗生剤などによる投薬やインプラント周辺の清掃によって収まりますが、最悪の場合はインプラント体を除去して再治療せざるを得なくなります。
インプラント術後に指示されたお薬を服用することも細菌感染からインプラント守る手段のひとつですので、術後のお薬は歯科医師の指示通りに必ず服用しましょう。また、術後に何らかの異変を感じたら、すぐに医師へ相談しましょう。
原因2 ドリルの摩擦熱
インプラントを埋入する際は手術用のドリルを使って骨に穴を開けます。しかし、ドリルを強く骨に押し付けてしまった、ドリルの回転数が早かった、ドリルの冷却が不十分であったなど、ドリルの扱い方を誤ると摩擦熱が生じ骨火傷を起こす原因となります。
骨は熱に弱い組織のため、47℃以上の状態が1分以上続くと熱によって損傷(骨火傷)を起こします。ドリルの摩擦熱により損傷を受けた骨は、骨の細胞の一部が壊死し、インプラント体と骨の定着を阻害する原因となります。このことが骨吸収やインプラント体の早期の脱落に繋がるのです。
残念ながら、この事例においてはインプラントの回復は見込めないでしょう。インプラントを撤去することになりますので、今後の再発防止と治療法についてなど、担当医とよく相談する必要性があります。